頭頸部がんを調べる
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頭頸部とうけいぶがんとは?
―特徴と原因、初期症状から検査、治療まで

頭頸部(とうけいぶ)とは、顔から首にかけた範囲を指す言葉です。その部位に発生するがんは、頭頸部がんと呼ばれます。頭頸部がんには種類があり、がんがどこに発生するかによって現れる症状も多様です。ここでは、頭頸部がんの特徴と原因、初期症状から検査、治療について解説します。

頭頸部がんの特徴と原因

頭頸部とは、脳や脊髄(せきずい)、眼球を除く、鎖骨から上の全ての領域を指します。頭頸部がんは、がんが発生する部位によって、 口腔がん(こうくうがん)(舌がん(ぜつがん)はここに含まれます)鼻腔がん(びくうがん)副鼻腔がん(ふくびくうがん)咽頭がん(いんとうがん)喉頭がん(こうとうがん)唾液腺がん(だえきせんがん)甲状腺がん(こうじょうせんがん)などに分けられます。

頭頸部は、人が生きていくために必要な機能が集中している部位です。食事や呼吸などの生命維持に欠かせない機能から、発声、嗅覚(きゅうかく)、味覚、聴覚などの日常生活を送る上で重要な機能まで、さまざまなものがあります。

そのため、頭頸部がんの治療では「がんを治すこと」「機能を残すこと」のバランスを考えて治療方法が選択される点が特徴です。また、治療によって顔の見た目が変化する可能性もあることから、整容面(見た目)にも配慮して治療が行われます。

図 頭頸部がんが発生する主な部位
図 頭頸部がんが発生する主な部位

頭頸部がんと診断される患者さんは、年間約5万人1)。全てのがんに占める割合は5%程度です。口腔がん、咽頭がん、喉頭がんなどは男性に多く、甲状腺がんは女性に多い傾向があります。

頭頸部がんの割合、種類、男女差 イメージ画像

頭頸部がんの発症には生活習慣が大きく関係しており、喫煙や過度の飲酒を続けることで発症リスクが高まることが分かっています。また、ウイルス感染が原因になることもあり、上咽頭がんではEBウイルス(エプスタインバールウイルス)の感染が、中咽頭がんではヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が発症に関わっているといわれています2)

頭頸部がんの発症リスクが高まる原因 イメージ画像

頭頸部がんの初期症状

頭頸部がんでは、がんができる部位によって現れる症状が異なります。いずれの症状もがんに特有のものではなく、ほかの病気による可能性もあるため、自覚症状だけでがんかどうかを判別することは困難です。

口内炎風邪のような症状が現れることもあり、それが1カ月以上治らない場合は注意が必要です。そのまま放置せず、できるだけ早めに医療機関を受診するようにしましょう。気になる症状がある場合、まずは耳鼻咽喉科(じびいんこうか)の医師に相談することをおすすめします

口内炎 イメージ画像

口内炎

風邪のような症状 イメージ画像

風邪のような症状

表 頭頸部がんの種類と主な症状

種類 特徴 主な症状
口腔がん

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口の中にできるがんを総称して口腔がんと呼ぶ。
口腔がんの中で舌(ぜつ)がんが最も多い。
  • 舌や口の中の粘膜が白っぽく変化する
  • 舌に赤い斑点や白い斑点ができる
  • 舌の側面にただれやしこりができる
  • 歯ぐきの腫(は)れや出血
鼻腔・
副鼻腔がん

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鼻の中にある空気の通り道(鼻腔)や鼻腔につながる空洞(副鼻腔)にできるがん。副鼻腔の上顎洞(じょうがくどう)という部分にできる上顎洞がんが最も多い。
  • 鼻づまりや鼻血を繰り返す
  • 頬のしびれや痛み、腫(は)
  • 眼球の突出
  • 物が二重に見える
咽頭がん

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のどにできるがんで、部位によって上咽頭(じょういんとう)がん、中咽頭(ちゅういんとう)がん、下咽頭(かいんとう)がんの3種類に分類される。
  • 首のしこり
  • 鼻づまり、鼻血
  • 耳がつまった感じ、聞こえにくい
  • 飲み込むときの違和感
  • のどの痛み
喉頭がん

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のどぼとけの位置にある喉頭という部分にできるがん。声門(せいもん)(左右の声帯とそれらの間の空間)にできる声門がんが最も多い。
  • 声のかすれ
  • のどの違和感、いがらっぽさ
  • 飲み込むときの痛み
  • 首の腫(は)
唾液腺がん

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唾液を作り出す唾液腺という臓器にできるがん。唾液腺の一つである耳下腺にできる耳下腺がんが最も多い。
  • 耳の下や耳の前側にしこりができる
  • あごの下にしこりができる
  • 顔の左右どちらかがうまく動かなくなる(顔面神経麻痺(まひ)
甲状腺がん

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のどぼとけのすぐ下に位置する甲状腺という臓器にできるがん。頭頸部がんの中では進行が遅く、がんとしてはおとなしいタイプとされる。
  • のどぼとけの下や首の横にしこりができる
  • 声のかすれ
  • 飲み込みにくさ
  • 息苦しさ

頭頸部がんの検査と診断の流れ

頭頸部がんの検査では、まず視診(ししん)と触診(しょくしん)を行います。直接見ることができない部位は、内視鏡を使って観察します。

異常が認められた場合、組織の一部を切り取って顕微鏡で詳しく調べる生検(せいけん)という検査を行い、がんかどうかを診断します。組織を切り出すことが難しい部位の場合は、がんが疑われる部分に注射針を刺し、吸い出した細胞を顕微鏡で調べます。

生検の結果、がんと診断された場合には、がんの広がりや転移の有無を調べるために、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査を実施します。また、咽頭がんなどでは転移ではなく、ほかの部位に別のがんが同時に見つかることが多いといわれており(重複がん)、胃がんや食道がんの有無も調べます3)

これらの検査結果を踏まえ、がんの大きさやリンパ節転移の状況、ほかの臓器への転移の状態などを総合的に判断し、がんの進行の程度を病期(ステージ)として分類します。ステージは、がんが進行していく順にⅠ(ワン)、Ⅱ(ツー)、Ⅲ(スリー)、Ⅳ(フォー)と進みます。ステージⅠ・Ⅱは早期がん、ステージⅢ・Ⅳは進行がんに相当します。

頭頸部がんの治療と生存率

治療方針は、がんのステージや患者さんの状態などを考慮して決めていきます。頭頸部がんの治療方法の3本柱は、①手術、②放射線治療、③薬物療法(抗がん剤などを使った治療)です。一般的に、頭頸部がんの根治(こんち)(完全に治ること)には、手術か放射線治療のどちらかが必要になります2)。薬物療法はがんを小さくしたり進行を抑えたりすることはできますが、根治させることは難しいため、手術や放射線治療の補助的な役割を担います。

なお、それぞれの治療方法については、頭頸部がんの治療方法で詳しく説明しておりますので、そちらをご覧ください。

頭頸部がんの治療方法 イメージ画像

がんの治療成績を示す指標の一つに、5年相対生存率があります。これは、日本人全体で5年後に生存している人と比べ、がんの治療を受けた人のうち5年後に生存している人がどのくらいの割合でいるかを表したものです。
100%に近いほど、治療で命を救える可能性が高いことを意味します。

頭頸部がんの中で甲状腺がんが最も5年相対生存率が高く、94.1%です4)。そのほか代表的な頭頸部がんの5年相対生存率は、舌がんが71.5%、中咽頭がんが61.3%、下咽頭がんが52.3%、喉頭がんが80.0%です。ただし、5年相対生存率はあくまで目安であり、がんを早期に発見できれば治る可能性も高まります。

治療終了後は、体調管理やがんの転移および再発の有無を確認するため、定期的な通院が必要です。頭頸部がんでは最初の治療終了後から2年以内に再発することが多いため、この期間は1~2カ月に1回程度の通院が目安とされています。

再発が見つかった場合は、再発の部位や最初の治療の内容、患者さんの状態などを考慮して治療方法が選択されます。再発がんの治療方法については、再発した場合の治療で詳しく説明しておりますので、そちらをご覧ください。

通院 イメージ画像

[参考文献]

  1. 国立がん研究センター. がん情報サービス「がん統計」(全国がん登録).
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#a14
  2. 青山寿昭, 花井信広. 頭頸部がんマスターガイド. メディカ出版, 2021. p.12-16.
  3. 丹生健一. もっと知ってほしい頭頸部がんのこと. NPO法人キャンサーネットジャパン, 2015. p.6.
  4. 全国がんセンター協議会. 全がん協加盟施設の生存率共同調査(2022年11月集計).
    https://kapweb.ncc.go.jp
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