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頭頸部がんの種類

口腔こうくうがんぜつがんとは?
―特徴と原因、初期症状から検査、治療まで

口の中にできるがんは、口腔がん(こうくうがん)と総称されます。口腔がんにはいくつかの種類がありますが、中でも舌にできる舌がんにかかる人が多いです。ここでは、舌がんを中心に口腔がんの特徴と原因、初期症状から検査、治療について解説します。

口腔がんの特徴と原因

口を開けた時に見える部分を口腔といいます。口腔には、食べ物をかみ砕いて味わい、飲み込んだり、正しく発音したりする機能があります。口腔は部位に分けることができ、がんができる部位によって次のように分類されます1)

  • 舌がん(ぜつがん):舌にできるがん
  • 口唇がん(こうしんがん):上下のくちびるにできるがん
  • 歯肉がん(しにくがん):上下の歯ぐきにできるがん
  • 頬粘膜がん(きょうねんまくがん):頬(ほお)の内側の粘膜にできるがん
  • 硬口蓋がん(こうこうがいがん):上あごの天井部分にできるがん
  • 口腔底がん(こうくうていがん):舌と下側の歯ぐきに囲まれた部分にできるがん
図1 口腔の部位
図1 口腔の部位

口腔がんと診断される患者さんは、年間1万2,000人ほどです2)がん全体に占める割合は約1%と頻度の少ないがんですが、かかる人の数は増加傾向にあります。男女比は約3:2と男性に多く見られることが特徴です。口腔がんのうち舌がんは最も患者数が多く、口腔がんの過半数を占めています。舌がんにかかる年齢は60代が最多ですが、20~30代でかかることもあります3)

口腔がんが発生する主な原因は、喫煙飲酒です。喫煙は発症リスクを高める最大の要因であり、口腔がんの8割はたばこと関係しているといわれています4)。また、口の中の衛生状態の悪化や、合わない入れ歯や虫歯などによる慢性的な刺激も口腔がんのリスク要因になります。

口腔がんのリスク要因 イメージ画像

口腔がん・舌がんの初期症状

口腔がんは直接観察でき、触って調べられることが大きな特徴です。舌がんは舌の側面や裏側の粘膜から発生することが多く、舌の先端や中央部分にはあまりできません1,4)

初期の口腔がんでは、痛みや出血などのはっきりした症状はあまりみられず、舌や口の中の粘膜が白っぽくなったり、赤くただれたり、舌に硬いしこりができたりします。歯肉がんの場合は、歯ぐきの腫れ(はれ)や出血歯のぐらつきといった症状が現れることがあります。がんが進行すると、痛みや出血が続く舌の動きが悪くなる口臭が強くなるといった症状が現れるようになります1,5)

舌や口の中の粘膜が赤くただれたりする症状は口腔がん・舌がんに特有のものではなく、口内炎や歯周病などでも現れます。そのため、自覚症状だけでがんかどうかを見極めるのは困難です。口の中の症状がなかなか治らない場合や悪化する場合は、できるだけ早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

図2 口腔がん・舌がんの主な症状
口内炎が2週間以上治らない イメージ画像

口内炎が
2週間以上治らない

舌や口の中の粘膜が白っぽく変化する イメージ画像

舌や口の中の粘膜が
白っぽく変化する

舌に赤い斑点や白い斑点がみられる イメージ画像

舌に赤い斑点や
白い斑点がみられる

舌の側面にただれやしこりができる イメージ画像

舌の側面にただれや
しこりができる

歯ぐきの腫れや出血がある イメージ画像

歯ぐきの
出血がある

歯がぐらつく イメージ画像

歯がぐらつく

舌を動かすときにしびれや違和感がある イメージ画像

舌を動かすときにしびれや違和感がある

食事や会話がしにくい イメージ画像

食事や会話がしにくい

口臭が強くなる イメージ画像

口臭が強くなる

口の中の痛みや出血が続く イメージ画像

口の中の痛みや
出血が続く

口腔がん・舌がんの診断のために行う検査

口腔がん・舌がんの検査では、まず視診(ししん)触診(しょくしん)を行います。視診では、口の中に光を当てながら舌や口の中の粘膜を直接観察し、がんが疑われる部分の色や形、大きさを確かめます。触診では、口の中に指を入れ、がんが疑われる部分に直接触れてがんの大きさや広がりを調べます。さらに、耳の下から首にかけて触診し、リンパ節の腫れがあるかどうかも確かめます。

視診や触診によって口腔がん・舌がんが疑われる場合、診断を確定するために組織診[生検(せいけん)ともいいます]細胞診を行います。組織診は小さなはさみ[鉗子(かんし)]などで疑わしい部分の組織の一部を採取する方法で、細胞診はブラシや綿棒などで粘膜の表面をこすって細胞を採取する方法です。採取した組織や細胞は顕微鏡で詳しく観察し、がん細胞の有無やがんの種類を調べます。

がんが見つかった場合には、がんの広がりや転移の有無を調べるために、超音波(エコー)検査CT検査、MRI検査などの画像検査を行います。必要に応じて、がんが全身に広がっているかどうかを調べるPET-CT検査も実施します。

これらの検査の結果を踏まえ、がんの大きさやリンパ節転移の状況ほかの臓器への転移の状態などを総合的に判断し、口腔がん・舌がんの進行の程度を病期(ステージ)として分類します。ステージはがんが進行していく順にⅠ(ワン)、Ⅱ(ツー)、Ⅲ(スリー)、Ⅳ(フォー)と進み、ステージⅠ・ステージⅡは早期がん、ステージⅢ・ステージⅣは進行がんに相当します。

口腔がん・舌がんの治療と後遺症への対応

治療方法は、がんのステージや患者さんの状態などを考慮して決めていきます。口腔がん・舌がんでは、がんがある部分を手術で切除する方法が治療の中心となります。早期がんでは、がんに直接針を刺して放射線を照射する組織内照射という治療も選択肢の一つですが、実施できる医療機関が限られているため、手術が選択されることがほとんどです3)

手術でがんが取りきれなかった場合や再発のリスクが高いと考えられる場合は、手術後に薬物療法(抗がん剤治療)放射線治療が行われることがあります。それぞれの治療方法については、頭頸部がんの治療方法で詳しく解説しておりますので、そちらをご覧ください。

がんの治療成績を示す指標の一つに、生存率があります。舌がんの場合、5年相対生存率は71.5%です6)。早期のがんほど生存率は高く、ステージⅠでは88.3%、ステージⅡでは82.7%です。

手術や放射線治療を行うと、食事をしたり話したりするための機能が低下することがあります。こうした後遺症に対応するために、治療後はリハビリテーションを行います。また、口腔がん・舌がんは早期でも首のリンパ節に転移する可能性があることが知られており、転移・再発の有無を確認するための定期的な検査も欠かせません。再発した場合の治療方法については、再発した場合の治療で詳しく説明しておりますので、そちらをご覧ください。

治療後の食事機能の低下 イメージ画像 通院 イメージ画像

[参考文献]

  1. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会. 舌がん・口腔がん 何科を受診すればいいの?.
    http://www.jibika.or.jp/owned/oral_cancer/
  2. 国立がん研究センター. がん情報サービス「がん統計」(全国がん登録).
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#a14
  3. 青山寿昭, 花井信広. 頭頸部がんマスターガイド. メディカ出版, 2021. p.64-70.
  4. 国立がん研究センター. がん情報サービス 舌がん.
    https://ganjoho.jp/public/cancer/tongue/index.html
  5. 国立がん研究センター. がん情報サービス 口腔がん.
    https://ganjoho.jp/public/cancer/oral/index.html
  6. 全国がんセンター協議会. 全がん協加盟施設の生存率共同調査(2022年11月集計).
    https://kapweb.ncc.go.jp
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