頭頸部がんを調べる
  1. 頭頸部がんとともに TOP
  2. 頭頸部がんを調べる
  3. 頭頸部がんの種類 - 唾液腺がん(耳下腺がん)
頭頸部がんの種類

唾液腺だえきせんがん耳下腺じかせんがん)とは?
―特徴と原因、初期症状から検査、治療まで

唾液を作り出す唾液腺という臓器にできるがんを唾液腺がん(だえきせんがん)といいます。唾液腺がんはがんができる部位によっていくつかの種類に分けられます。中でも耳下腺がん(じかせんがん)の患者数が多いため、ここでは主に耳下腺がんを中心に、唾液腺がんの特徴と原因、初期症状から検査、治療について解説します。

唾液腺(耳下腺)とは、どんな器官

唾液の分泌を担う唾液腺は、大唾液腺小唾液腺の大きく二つに分類され、唾液のほとんどは大唾液腺から分泌されます。大唾液腺は、耳の前から下にかけて存在する耳下腺、あごの下にある顎下腺(がっかせん)口腔底(こうくうてい)(舌と下側の歯ぐきの間の部分)の下にある舌下腺(ぜっかせん)という三つからなります。耳下腺は子どもの頃にかかることの多い、おたふく風邪で腫れる(はれる)部分です。

図 大唾液腺の部位
図 大唾液腺の部位

唾液腺がん(耳下腺がん)の特徴と原因

唾液腺がんの約9割は耳下腺がんと顎下腺がんであり、舌下腺がんや小唾液腺がんは非常にまれです1)。2019年に新たに大唾液腺がんと診断された患者さんは1,813人で、そのうち耳下腺がんと診断された患者さんは1,249人と報告されています2)

唾液腺がんは、頭頸部(とうけいぶ)(顔から首までの範囲)にできるほかのがんと比べて病理組織型(がん細胞の種類や増え方による分類)の種類が非常に多いことが特徴です。組織型によって悪性度が大きく異なるため、治療方針の決定には病理組織型の診断がとても重要です。

唾液腺がんの原因ははっきりとは分かっていませんが、職業的に発がん性のある物質を吸引することがある、放射線への被ばく、喫煙などが発症に関係していると考えられています3,4)

唾液腺がん(耳下腺がん)のリスク要因 イメージ画像

唾液腺がん(耳下腺がん)に特有の初期症状

唾液腺がんで最も多い症状が、痛みのないしこりです1)。耳下腺がんでは耳の下や耳の前側に、顎下腺がんではあごの下に腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)ができることで、しこりとして自覚します。

がんが進行すると、痛みやしびれが現れることがあります5,6)。耳下腺の中には顔の筋肉を動かして表情を作る顔面神経が通っているため、耳下腺がんの場合、進行すると顔面神経麻痺(まひ)が起こることがあります。
顔面神経麻痺では顔の左右どちらかがうまく動かなくなり、目がしっかり閉じることができない、飲水時に口元から水がこぼれる、口の動きが悪くなるなどの症状が現れます。

顔面神経麻痺は耳下腺がん以外の原因によるものがほとんどです。耳の下や前側にしこりや痛みがある場合は注意が必要です。しこりが小さくても顔面神経麻痺が現れることはあるので、症状が改善しない場合は耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

痛みのないしこり イメージ画像

痛みのないしこり

痛みやしびれ イメージ画像

痛みやしびれ

顔面神経麻痺 イメージ画像

顔面神経麻痺

唾液腺がん(耳下腺がん)の
診断のために行う検査

耳の下や前側、あごの下に腫瘤がある場合、まず視診(ししん)触診(しょくしん)を行います。

腫瘤が良性か悪性かを判別するには、組織を切り取って顕微鏡で調べる生検(せいけん)という検査を行うことが一般的ですが、唾液腺がんの場合はがんが疑われる部分(病変)に直接到達することができないため、生検を行うのは容易ではありません。そこで、病変部に細い針を刺し、注射器で吸い出した細胞を顕微鏡で調べる穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)を行い、がんかどうかを診断します。

そのほか、がんの広がりや転移の有無を調べるために、超音波(エコー)検査CT検査MRI検査などを行います。また、必要に応じて全身の転移を調べるためのPET検査を実施します。

これらの検査結果を踏まえ、がんの大きさや広がり、リンパ節転移の状況、ほかの臓器への転移の有無などを総合的に判断し、進行の程度を病期(ステージ)として分類します。ステージは、がんが進行していく順にⅠ(ワン)、Ⅱ(ツー)、Ⅲ(スリー)、Ⅳ(フォー)と進みます。ステージⅠ・Ⅱは早期がん、ステージⅢ・Ⅳは進行がんに相当します。

唾液腺がん(耳下腺がん)の治療

頭頸部がんの治療方法には、手術、放射線治療、薬物療法(抗がん剤治療)などがあるものの、唾液腺がんの場合、治療の中心は手術です1)。切除する範囲は、がんの広がり方や悪性度に応じて決定されます。
耳下腺がんの場合、麻痺がなければ顔面神経をなるべく残す方向で手術が行われますが、がんの広がり方によっては切除しなくてはならないこともあります。

切除する範囲が大きい場合や顔面神経を切除した場合は、患者さん自身の太ももや腹部の組織を移植する再建手術(さいけんしゅじゅつ)(切り取った器官を新たに作り直す手術)が行われることがあります。また、手術後の検査結果によっては、放射線治療が追加される場合もあります5)

治療終了後は、がんの転移・再発の有無を確認するため、定期的に通院して診察・検査を受けることが大切です。唾液腺がんは組織型によって転移・再発のしやすさ、がんが大きくなるスピードが異なるため、受診の間隔や実施する検査はそれぞれの患者さんに合わせて決めていきます。再発した場合の治療方法については、再発した場合の治療で詳しく説明しておりますので、そちらをご覧ください。

治療後の食事機能の低下 イメージ画像 通院 イメージ画像

[参考文献]

  1. 日本頭頸部外科学会. 唾液腺がん.
    https://www.jshns.org/modules/citizens/index.php?content_id=12
  2. 国立がん研究センター. がん情報サービス「がん統計」(全国がん登録).
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#a14
  3. 日本頭頸部癌学会. 頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版. 金原出版, 2022. p.89-90.
  4. Swanson GM, et al. Ann Epidemiol 1997; 7: 369-374.
  5. 日本頭頸部外科学会. 耳下腺がん.
    https://www.jshns.org/modules/citizens/index.php?content_id=27
  6. 日本頭頸部外科学会. 顎下腺がん.
    https://www.jshns.org/modules/citizens/index.php?content_id=28
ページTOPへ戻る