光免疫療法
(アルミノックス治療)とは
頭頸部がん(とうけいぶがん)の主な治療法には手術(外科治療)、
放射線治療、薬物療法(抗がん剤などを使った治療)があり、
それらの治療を行うことが難しい進行がんや再発がんでは、
光免疫療法(アルミノックス治療)という治療法も選択肢の一つです。
ここでは、光免疫療法の仕組みや、対象と治療の流れについて詳しく説明します。
光免疫療法(アルミノックス治療)の仕組み
頭頸部がんの細胞の表面には、細胞の増殖を促す上皮成長因子受容体(EGFR)というタンパク質が多く存在します。光免疫療法では、このタンパク質に結合する分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)に色素を結合させた薬剤を使用します。この薬剤に使われている色素には、光が当たると反応を起こし、がん細胞を破壊する性質があります。
薬剤を点滴投与して1日ほど経つと、がん細胞に薬剤が十分付着した状態になります。その状態で特定の波長のレーザー光を照射する医療機器を使うと、薬剤の色素が光に反応し、がん細胞が破壊されます。
① 薬剤を点滴
② がん細胞に存在する
タンパク質に薬剤が結合
③ 薬剤がレーザー光に反応して
がん細胞を破壊
正常な細胞に薬剤はほとんど付着しないため、レーザー光を当ててもダメージは受けません。また、レーザー光自体は害を及ぼすことがないため、光免疫療法は体への負担が少ない治療法です。
光免疫療法(アルミノックス治療)の対象と治療の流れ
光免疫療法において、放射線治療などの標準的な治療が可能な場合は、そちらを優先することが定められています1)。
また、光免疫療法で使用する薬剤に対してアレルギー反応が現れたことがある人や、がんが頸動脈(けいどうみゃく)まで広がっている人は、光免疫療法を受けることができません。
治療は薬剤の投与とレーザー光照射の二段階に分けられ、すべて入院を要します2)。薬剤は光に反応する性質があるため、点滴投与する際はカーテンやブラインドを閉めた薄暗い部屋で行います。
薬剤を投与してから1日経過した後、全身麻酔を行った上で、がんがある部位にレーザー光を照射します。レーザー光は体の表面から照射する方法と、がんに針を刺して光ファイバーを挿入し、体内から照射する方法があります。
治療後、強い光に当たると皮膚が赤くなったり、皮膚や目に痛みが生じたりする光線過敏症が現れることがあります。そのため、治療後4週間はなるべく外出を避け、直射日光が当たらないようにすることが大切です。外出する際は、皮膚や目に強い光が当たらないように、帽子やサングラス、長袖シャツや長ズボン、手袋などを着用します。
光免疫療法を希望される場合は、まずは主治医に相談するようにしましょう。そのほかの治療方法も含め、病状に応じて最適と考えられる治療を検討することが重要です。
[参考文献]
- 国立がん研究センター. がん光免疫療法全般に関するQ&A.
(https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/topics/2022/NCCHE_AlluminoxQA_20220704.pdf) - 林 隆一. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 2022; 125: 1413-1416.